不規則な形の苔むした幅20メートル、高さ3メートルの火山岩の岩肌を幾千筋の水が細く流れ落ちます。素晴らしい自然の造形、千条の滝は、長らく地元住民の数人のみが知る隠れた名所でしたが、19世紀前半になりその状況が一変しました。現在も創業中の箱根で最も歴史ある旅館のひとつ、三河屋旅館の創業者が、旅館近くの美しい滝により注目を集めることで、三河屋旅館への注目も必然的に高まると確信し、滝への遊歩道を建設し、近くに茶屋も設けて、客寄せを図りました。その努力は奏功し、大正時代(1912年–1926年)には千条の滝は人気の観光名所となり、滝見物は箱根を訪れる人の定番となりました。度重なる地震が脆弱な岩に爪痕を残し、景色は当時からは幾分変わりましたが、千条の滝は今でも小涌谷駅から20分ほど足を伸ばすに値する観光地として知られています。紅葉が景色に彩りを添える秋の光景は一段と美しいものです。